感想 悪人伝
韓国ヤクザのボスと熱血刑事 VS 連続殺人鬼。
最近ではエターナルズでMCUデビューも果たしたみんなの兄貴マ・ドンソクがこわーい韓国ヤクザのボスとして活躍する映画。
まず設定が面白い。
ヤクザの組長がなんの因果か、無差別殺人犯に襲われて入院する大ケガをしてしまう。
このままではヤクザのメンツがたたない。
そこで対立しているはずの刑事と協力して犯人を捕まえようとする。
このヤクザのボスがゴリマッチョでコワモテ、普通の人ならまず襲わなそうなマ•ドンソクなのが面白い。
いろんな映画で無双しているドンソク兄貴でも隙をついたら刺されるんだなあと当たり前のことを思ってしまった。
うっかりドンソク組長を狙ったせいで犯人は最終的に追い詰められていく。
舞台は2000年代らしいが、どこか昭和の香りを感じる韓国。
共闘する事になる刑事も熱血というか、ひとり気炎をはいていて昭和のドラマに出てくる刑事みたい。
捕まえた小悪党に原付を運転させてノーヘルで事件現場に行くなどかなりはっちゃけている。
日本が舞台なら違和感しかないけど韓国映画だから、外国の話だからというフィルターを通すとその大らかさも魅力的に見えてくる不思議。
昭和の警察ドラマ、太陽に吠えろに習ってあだ名を付けるなら革ジャン刑事とか?
三者三様の悪人達
組長、刑事、連続殺人犯の3 人はそれぞれの目的のために、おのおの手を汚す。
組長は自分のメンツを守るため、刑事は手柄を立てるため、殺人犯は己の愉悦のため。
刑事は悪い人ではないのだが、自分の手で犯人を捕まえたいという刑事としての欲求が1番。
後から来た特捜班に手柄を横取りされたくいので情報は渡さない。
もっと早くに犯人の似顔絵を公開していれば被害を防げたのでは…やっぱり悪人か。
ヤクザたちと仲良く食堂での会食シーン、馴染みすぎててほぼヤクザ。
深淵を覗く時、深淵に見られているといわれるように
敵対しているもの同士は、おたがい似てくるというやつなのか?
そんな感じで前半はかなり面白いんだけど中盤あたりからいろいろ気になってくる。
組長の敵対ヤクザの葬儀に紛れ込んだ犯人が、ある人物にメモを渡す…が、目の前に自分は連続殺人犯だという人物がいきなり現れてそれを信じるだろうか?
メモがなくても組長を襲う気まんまんだったのかもしれないけど。
どうなんだろうと思ったが、お話を最後まで見るとこの辺りが重要な布石だったのが分かるのでここはグッと飲み込んで面白さに身を任せてしまうのが吉っぽい。
襲撃に巻き込まれた刑事がここから一線を超えた状況になり引くに引けなくなる。
組長と呉越同舟、最後までアクセル踏んでくしかねええとなるのでやっぱり重要なシーンだと思う。
なので、もうちょっと説得力が欲しかった。
マ・ドンソク兄貴に胸キュン
組長が雨の降る中、傘をさして刑事を待ってると1人の女学生が雨に濡れてバスを待っている。
女学生に自分の傘を差し出す組長。
こ、これってまさか!
あれじゃん!
不良が雨に濡れてるネコを助けるみたいなやつー!
少女マンガにあるようなシーンがでてきてちょっとびっくりした。
冒頭、サンドバッグでボコボコにしてた人とほんとに同一人物?
でも他の俳優さんがやったら浮いてしまう場面でも、ドンソク兄貴だと合うんですよねえ。
おわりと気になったところ
犯人は動機など多くは語られず、そのせいか最後まで不気味。
無差別殺人犯なので刑事や組長と違いグレーゾーンなどなく終始まっくろ。
ただ、はじめは組長を襲ったやばいやつ…だったのに見ているうちにだんだんと、この犯人、行き当たりばったりで何も考えてない?と思えてくる。
なので組長との掘り下げた会話をもう少し聞いてみたかった。
ヤクザの組長も人を暴力でごりごりに支配している。
その事を犯人に指摘されてもまったく意に解さないのが悲しい。
後半、犯人が急に今までしなかった身代金の要求をしてきたのは愉快犯だからかもしれないが気になった。
女学生の事件もとってつけた感じを受けた。
あと細かい事だけど何十人もいる舎弟たちが誰ひとり刑事との関係を話さないとか、みんな口が固いな。
最後の裁判のシーンがきれいに収まったので、すっきり見終われる。
が、3人とも自分のした事に反省する素振りは見せない。
悪人なので!
悪人伝は韓国ノワール映画として怖くてバイオレンスなドンソク兄貴をきっちり堪能できる、みんな悪くてみんないいそんな映画。