映画の感想 UNKNOWN アンノウン (ネタバレあり)

これは中年の危機の映画。

 

外国で事故に遭い4日間入院。心配してるはずの奥さんのことに戻ったてみたら、自分のことは知らんって言うし、自分に成り済ました奴といっしょにいる。

おかしいのは自分の方なのか。

知らん外国で身分証明ができる物も頼れる人もいない。

自分で自分だと証明することができない。アイデンティティクライシス。

 

自分で自分を証明できないって怖くない?

例えば戸籍、免許証やパスポート…知り合いが1人もいなければどうやって身元を証明することができるだろう。

自分というのは自分で思ってるほど確固たる物ではないようだ。

 

主人公のマーティンは大事な自分の証の入ってる鞄を空港に忘れてしまう。

よりによってパスポートや大事な仕事のつまってる鞄を。

そんなことある〜と思うけど、分かるのは中年の危機はもう始まってるということだ。

 

中年の危機は周りから見たら滑稽だが本人にしたら生きるか死ぬかだ。メンタル的に。

なので映画の中のマーティンも命を狙われたり殺し屋に追われたりする。

自分の立ち位置が分からなくなり空回りして、周りの人をしっちゃかめっちゃかにしてしまう。でも本人は必死。

一度見終わって最初から見直すと、暗殺組織もこんな事になってびっくりだよねと思ってしまう。

 

物語の後半、マーティンは空港で鞄を取り戻し自分の今までしてきたことと向き合う。

普通の映画なら終盤の盛り上がりの前のこの辺で主人公をどん底に突き落とす。

でも本作では鞄を…自分を取り戻した主人公は俄然、げんきになってくる。

 

最終的に自分の偽物と対決し勝利する。

偽物はもう1人の自分なので生かしておく事はできない。

古い自分は死んで新しい自分が勝ったのだ。

 

ネタバレになるが奥さんが爆死したのに苦笑してしまった。

ちょっとひどすぎない。なにか怨がこもっていそうで超こわいんですけどー!

いくらでもパスポート偽造できる組織なのにそれはないでしょと。

 

最後のシーンは主人公と新しい奥さんが空港から出国するだろうところで終わる。

新しい人生の旅立ち。

そこには勝利の証、トロフィーワイフとしての若くて新しい妻。

という訳で古い妻には強制的に退場してもらったということか。

 

仕事も家庭もわずらわしいことは全部捨てて、別人になって若くて綺麗なパートナーと人生をやり直したいという願望は誰しも一度は思ってしまうのかもしれない。

 

あと主人公マーティンの動きがもっさりして強すぎないのがスーパーヒーローではない中年のおっさん代表っぽくて良かった。